「中耕」
【読み】ちゅうこう
【用例】月に1~2度、除草を兼ねて中耕をしたら、野菜の育ちがグンとよくなった。
【用例】月に1~2度、除草を兼ねて中耕をしたら、野菜の育ちがグンとよくなった。
栽培を続けているとはじめのうちはやわらかかった土も、雨で叩かれて土の表面が次第に締まってかたくなってきます。
栽培の途中で株間や条間、畝間の表面の浅い部分を軽く耕すことを中耕といいます。中耕は昔から行われてきた農耕の知恵です。草が生えてきたら除草を兼ねて中耕を行いましょう。
中耕を行って土がほぐれると、土に新鮮な空気が出入りしやすくなり、その結果、肥料効果が表れて野菜の生長が促されます。これは、酸素と水分が適度に土中に供給されることで土壌微生物が活性化し、土中の有機物の分解が進むからです。このように中耕には追肥をするのと同様の効果があります。
もちろん追肥も野菜を育てるうえで有効な作業です。ですが、肥料中心の多肥栽培ではどうしても病虫害が出やすくなります。ときどき中耕を行い、少なめの肥料での栽培を心掛けるのが家庭菜園ではおすすめです。野菜の味もよくなります。
アブラムシなどの害虫被害も自然と抑えられ、無農薬での野菜づくりが容易になるメリットが得られます。中耕=追肥、と覚えておきましょう。
中耕には、草刈り鎌、鍬、三角ホーなどを利用します。
タマネギの株間を中耕して生育を促す。除草しながら、土の表層2~3cmを軽くほぐすとよい。
「土寄せ」
【読み】つちよせ
【用例】長ネギ栽培では土寄せを何度か繰り返しながら、軟白部を伸ばしていく。
【用例】長ネギ栽培では土寄せを何度か繰り返しながら、軟白部を伸ばしていく。
鍬や三角ホーなどを使って、畝間や条間の土の表面の浅い部分を軽くほぐし(中耕)、その土を株元に寄せることです。
土寄せの効能はいくつもあります。
土寄せをすると中耕同様の肥料効果が得られて、野菜の生育が促されます。また、畝間の土を株元に寄せるわけですから、畝が高くなり、その分、水はけもよくなります。中耕同様、除草を兼ねて土寄せを行いましょう。
また、株元に土を寄せることで、株が安定して倒伏を防げます。ダイコンの間引きをしたら軽く土寄せをし、また、ブロッコリーの苗を植え、活着したら株元に土を寄せておきます。このひと手間で株がしっかりと安定して生育が促されます。なお、倒伏しないまでも株が不安定な状態で風に揺さぶられると、野菜にストレスがかかって生育は悪くなります。
長ネギ栽培では土寄せを繰り返して軟白部(根の白い部分)を長く生長させます。根を切らないよう、畝間の土を株元に寄せてかぶせるのがコツです。根が切れると株が弱り、病気が出やすくなります。
ジャガイモやサトイモ栽培でも土寄せをし、イモが地表に出てこないようにします。イモが地表に出ると緑化してしまい、品質のいいイモが採れません。
エダマメも土寄せをするとよく育ち、マメの収量が上がります。土寄せをして土がほぐれ新鮮な空気が土中に入ると、養水分の吸収がよくなるほか、エダマメは根が少し切れるとそれが刺激になって新しい根が増えます。新しい根には根粒菌がついて共生を始めるため、エダマメの生育はなおよくなります。
サトイモの土寄せ。通路部分の土を株元に寄せて畝に盛っていく。
「わき芽かき」
【読み】わきめかき
【用例】大玉トマトはわき芽かきをこまめに行い、主枝1本仕立てにすると栽培しやすい。
【用例】大玉トマトはわき芽かきをこまめに行い、主枝1本仕立てにすると栽培しやすい。
わき芽は、野菜の茎と葉の付け根の部分(節)から出てくる芽のことです。
トマトやナスでは“主枝”から出るわき芽を“側枝”と呼び、キュウリやスイカなどでは“親ヅル”から出るわき芽を“子ヅル”と呼びます。ちなみに、子ヅルから出るわき芽は“孫ヅル”です。
野菜によっては、わき芽を放置すると増えた側枝に花が咲き、養分が分散して実が小さくなってしまいます。また、枝葉が茂って風通しや日の当たりが悪くなり病虫害が発生しやすくなります。わき芽の管理は大事な栽培ポイントになります。
大玉トマト栽培では、わき芽をこまめにかいて主枝1本を伸ばす1本仕立てや、主枝とわき芽1本を伸ばす2本仕立てが管理しやすい方法です。ミニトマト栽培では3~4本仕立てもおすすめです。
ナスやピーマン栽培では、2~4本仕立てにしたあとは、枝葉が茂りすぎないように出てくるわき芽を適宜カットして栽培します。
スイカ栽培では、5~6節で先端を摘み(摘芯)、わき芽を3~4本伸ばして子ヅルに実をつける方法がよく行われます。
多肥の畑では、わき芽がどんどん出て枝葉が茂りやすくなります。“ツルボケ”と呼ばれる異常生長を起こし、病虫害も多発します。
ツルボケのリスクを回避するには、少肥を心掛けることがポイント。低投与型の有機栽培がおすすめで、収穫物の味もよくなります。
なお、わき芽が出ると地下では旺盛に発根します。樹に勢いがないときは、わき芽かきをするタイミングを少し遅らせると根が増え、樹の元気を回復させることができます。
トマトのわき芽かき。10cm程度の長さのわき芽を指でつまんで折り取るとよい。
「摘果」
【読み】てきか
【用例】なり疲れしてきたら、実が小さなうちに摘果して樹勢を回復させるとよい。
【用例】なり疲れしてきたら、実が小さなうちに摘果して樹勢を回復させるとよい。
摘果とは、実の一部を小さなうちに間引くことです。せっかくついた実を取ってしまうのはもったいないと思うかもしれませんが、実の数を調節すると、充実したおいしい実を収穫することができます。
また、生育の初期段階では、摘果することで体を大きくする方にエネルギーを向かわせることが大事です。その後も、樹の勢いが弱くなって実のつきが悪くなってきたと感じたら、積極的に摘果をして樹への負担を減らすと元気を回復させることができます。
キュウリ栽培では5~7節目までは摘果して実をつけさせず、ツルを大きく育てるのを優先させます。また、栽培中に樹がバテてくると曲がり果が出始めます。曲がり果は摘果し、そのほかの実も小さなうちに収穫し、樹勢を回復させます。樹勢の回復には追肥と水やりも重要ですが、まず、摘果をして樹勢をコントロールするテクニックを覚えておきましょう。
大玉トマトの場合、1房に5~6個の実がなりますが、すべての実を収穫しようとすると負担が大きいので摘果が必要です。1~2段目は2~3個に絞り、それ以降は1房あたり3~4個を目指すとおいしい実が採れるようになります。花房の先の方についた実を小さいうちに摘み取ります。
ミニトマトや中玉トマトは摘果しなくても構いませんが、それでも花房の先端近くの小さな実を摘果すると残った実がおいしくなります。
「有機物マルチ」
【読み】ゆうきぶつまるち
【用例】有機物マルチを利用すると、土が自然に肥沃になり、また、天敵も増えて病虫害が抑えられる。梅雨が明けたら有機物マルチを厚めに敷いておこう。
【用例】有機物マルチを利用すると、土が自然に肥沃になり、また、天敵も増えて病虫害が抑えられる。梅雨が明けたら有機物マルチを厚めに敷いておこう。
土の表面をビニール資材などで覆うことをマルチングといいます(略して、マルチ)。マルチ栽培では、地温や水分が安定して野菜の根が守られ、生育が大いに促されます。
有機物マルチは、ビニール資材の代わりに、ワラ、刈り草、落ち葉、もみ殻、腐葉土、堆肥などの有機物で土の表面を覆うことです。
黒のマルチフィルムほどの雑草抑制効果は期待できませんが、有機物マルチを利用すると地温と土壌水分が安定して野菜の生育が促されます。降雨による泥はねも抑えられ病気予防効果もあります。
さらに、有機物マルチは土壌微生物のエサになるため、土壌微生物が活性化し、土が自然に表層から団粒化するメリットがあり、土が肥えて野菜は養分を吸収しやすくなります。
また、有機物マルチには害虫の天敵となる益虫や、病原菌を抑える拮抗菌を増やす効果もあります。無農薬栽培がしやすくなります。
有機物マルチの敷き方ですが、地温が低いうちは土が見え隠れする程度に敷いておきます。これは、日光を土に当てて地温を上げるためです。梅雨明け以降は厚めに敷いて、地温の上昇を抑え、土の湿度を適度にキープするのがコツです。栽培が終わる頃には有機物マルチの分解が進んで、土が自然に肥えており、次作の野菜を育てるのに適した土に変化します。これもメリットです。
ムギ類やマメ科の緑肥作物を畝間に育てて土をカバーするマルチングの方法もあります。リビングマルチ(生きているマルチ)と呼ばれ、こちらもおすすめです。雑草抑え、風よけ、水はけ向上、土の乾燥防止、天敵パワーの増強などのメリットのほか、刈れば有機物マルチの材料に利用できます。
刈り草を畝に敷いている例。土がかたくならず、野菜の生育が促される。
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