エキスパート
◆田村吾郎さん
たむらごろう●わんぱく自然農園たむそん代表。東京農業大学修士課程修了。神奈川県愛川町で自然農を実践する農業家。農薬や肥料、堆肥を一切使わず、地力を活かした農法で固定種野菜のみを年間100品種以上栽培している。
http://tamuson.com/
◆毛呂陽子さん
もろようこ●菜園歴29年。滋賀県にある約300m2の畑で有機・無農薬で野菜づくりを楽しんでいる家庭菜園の達人。自ら考案した育苗箱を利用して土を盛り上げた高畝「上げ床畝」でおいしく安心な野菜づくりを目指す。
◆坪内 浩さん
つぼうちひろし●埼玉県秩父市のイタリアンレストラン「cucina salve(クチーナ・サルヴェ)」のオーナーシェフ。同じ秩父市にある100アールの「坪内農園」で、無肥料・無農薬で栽培した野菜やハーブをレストランで提供している。
砂地の畑で小さなイモしかできませんでした。
Q|クエスチョン
水はけのいい砂地の畑で、枯れ草とソルゴーのみでジャガイモを育ててみましたが、種イモの半分くらいのサイズのイモしかできませんでした。まだまだ土づくりができていないと実感したのと、保肥力のない砂地では前作の肥料がほとんど残っていないのかもと思いました。砂地の畑での土づくりを教えてください。
●園芸太郎さん/福岡県/菜園歴7年
A|アンサー
田村吾郎さん:
まず、大前提として、大きなジャガイモを育てるなら水やリン酸が多いほうが有利です。でも、水が多いと腐りやすく、養分が多いと病気が出やすくなります。
乾いた痩せ地で育てたジャガイモのほうが、小ぶりで収量も少なくなりますが、味がよく、貯蔵性が増します。砂地の畑で育てたら、大きくなくてもおいしいイモができるのです。
また、砂地の土を肥やすなら、肥料を入れるのではなく、繊維質と有機質に富んだ草を土に積み続けてください。そして敷き草が朽ちたら土に入れましょう。徐々に土がよくなり、表土からほくほくした土に変わってくるはずです。
イモをしっかりと太らせたいなら、約4か月間の生育期間を確保するために、逆算して遅れないように種イモを植えつけることも大事です。
毛呂陽子さん:
砂地の畑は、水はけがよいので比較的ジャガイモはつくりやすいと思うのですが、保湿性や保肥力が乏しいのが難点ですね。
土づくりの際にマメ科の緑肥作物などを育てたり、野菜の残渣やもみ殻、落ち葉、雑草などからつくった堆肥をすき込んだりして、土壌改良していくといいでしょう。土がよくなってくると白っぽい色から黒っぽい土の色になります。
ただ、忘れてはいけないのが、ジャガイモは少量の肥料で十分育てることができるということです。肥料過多の畑で育てると、地上部だけ茂り、かえって小さいイモになります。
坪内 浩さん:
アンデス山脈原産のジャガイモは、土壌の栄養成分が少ない砂質や火山灰土の畑では比較的育てやすい作物です。
土に入れた枯れ草とソルゴーを微生物が分解する際に、土壌中の窒素成分を一時的に利用して“窒素飢餓”が起こり、ジャガイモの地上部が十分に育たなくて、イモが肥大できなかったのかもしれません。
砂地の畑の改良は、肥料過多になりすぎない程度に、腐葉土もしくは完熟堆肥をすき込みます。腐葉土や完熟堆肥を入れる場合は、植えつけの1か月以上前にすき込むようにしましょう。
土壌中の微生物を多様化させて土の団粒化を進められれば、肥料成分の流出も抑えられると思います。
肌がきれいなイモを育てたいです。
Q|クエスチョン
男爵薯を収穫したのですが、おそらくそうか病で、ガサガサの肌になっていました。料理をするときに皮を厚く削り落としてむいています。苦土石灰はまかないで、種イモを埋めたのですが……。肌がきれいなジャガイモに育てる方法を教えてください。
●せっちゃんさん/茨城県/菜園歴6年
A|アンサー
田村吾郎さん:
ジャガイモの肌が汚くなる病気は2つあって、その原因はまったく異なります。
ひとつは“そうか病”。イモにかさぶたのような病斑ができるのですが、放線菌による病気で、アルカリ性土壌で乾燥気味、気温20度以上で出やすくなります。
もうひとつは、“粉状そうか病”。これは原生生物による病気で、酸性土壌で多湿気味、13~20度以下の低めの気温で出やすくなります。
このような極端な環境になるのを避けるためには、草マルチが有効です。地温を上げすぎず、保温にもなり、乾燥を防いで保湿にもなります。また、有機物が多いと緩衝能が働き、土壌のpHを安定させて中性に近づけることがわかっています。
そうか病も粉状そうか病も地力が弱いときには出やすくなるので、たっぷり敷きワラをして豊かな土に育てていくといいでしょう。
病斑が出た皮を厚めにむくと食べられます。そうか病のジャガイモは皮ごとゆでたあとに、包丁を使って皮をむき、かさぶたのようなところを刃先にひっかけるときれいにはがれます。
毛呂陽子さん:
そうか病は連作や肥料過多、アルカリ性土壌で発生しやすいようです。私も鶏ふんを入れて育てていた頃は肌が汚くなったことがあります。
無肥料で垂直仕立て栽培を試みたところ、肌がツルツルできれいなジャガイモを収穫することができました。肥料は使わず、株の両側からヒモで挟んで、茎を立たせるやり方です。
通常栽培するときも、前作の残肥のみで育てていて、石灰や肥料は入れていません。そのほうがきれいなイモが採れます。
また、ネギとジャガイモの交互リレー栽培やネギとの混植も、病気予防になってよかったように思います。
坪内 浩さん:
そうか病のジャガイモも、中身(肉質)には影響がないため問題なく食べられます。見た目がガサガサしていても、皮を少し厚めにむけば大丈夫です。
肌がきれいなジャガイモにするポイントは、「種イモの清潔さ」と「未熟な有機物を土の中に残さないこと」です。完熟堆肥や腐葉土を使う場合でも、早めにすき込んで分解を終わらせておくことが大切です。
また、そうか病や国内でも感染が確認されているジャガイモシストセンチュウに抵抗性を持つ品種の種イモが販売されていますが、その抵抗性は100%ではありません。
したがって、土づくりを進めつつ、連作を避けて輪作をすることによってセンチュウ密度を抑制することが、もっとも現実的で確実な対策といえます。
・そうか病
放線菌が原因、アルカリ性土壌、多湿、20度以上で増える。
・粉状そうか病
原生生物が原因、酸性土壌、乾燥、13~20度以下で増える。



