寒締めホウレンソウとは(特徴)
寒さに耐え甘さを蓄える 寒締めホウレンソウ
ホウレンソウは発芽が難しいと、栽培をあきらめる方もいるかもしれませんが、土壌酸度調整をした畝に、一晩水に浸けたタネをまけば、難なく発芽します。さまざまな加工種子もつくられているので、発芽に苦労しているなら利用してみたらいいでしょう。
9月~11月上旬に秋まきのホウレンソウをまきます。なかでも10月以降にタネをまき、1月~2月に収穫するものは「寒締め」と呼ばれ、とても甘くておいしいです。
霜や厳しい寒さに耐え、凍らないように葉に糖分を蓄えるからです。
*ヒユ科
みなみきよつぐ●家庭菜園歴17年。愛媛県新居浜市にある約1000m2の畑で農薬を使わない野菜づくりを楽しむ。家庭菜園を始めた頃は化学肥料を使っていたが、5年前から有機栽培に移行。有機栽培2年目にはボカシ肥料の施肥量を半分に減らし、3年目に畑の土壌酸度がph6前後で安定しているのを確認してから、作付けのたびに堆肥や石灰をすき込むことを中止。その後も徐々に使う堆肥や有機質肥料の量を減らしつつ、畑の草や緑肥作物を活かした野菜づくりを行い、病虫害の少ない畑でおいしい野菜づくりを実践中。
『春はトウ立ちしにくい西洋種の品種を育てていますが、秋まきするときは、葉にギザギザした切れ込みがあって、根元が赤い東洋種を選んでいます。私は「次郎丸(じろうまる)ほうれん草」(ウタネ)という品種を育てています。』
栽培の目安・カレンダー
■まき方:株間2~3mm、条間30cmで2条
■元肥:ボカシ肥料を1m2あたり200mlすき込んでおく。酸度調整が必要ならカキ殻石灰を1m2あたり100ml施す。
■追肥:なし
育て方
①土づくり
タネまきの1か月前までに畝の準備をします。幅70cm、黒マルチなしの畝を準備します。
ホウレンソウは、酸性土壌や肥料不足の土壌で育てると、生育の途中で生長が止まったり、葉が黄色くなったりします。
ホウレンソウがよく育たない場合は、一度畑の土壌酸度を測定してみるといいでしょう。
もしpH6.5以下なら畝を立てる際に、カキ殻石灰などの有機石灰を畝の表面がうっすら白くなるくらいすき込んで、酸度調整します。
1m2あたりカキ殻石灰を1つかみ(約100ml)と元肥としてボカシ肥料を200mlまいて、表層5cmくらいにすき込んでなじませます。
私の畑では土壌酸度が安定しているので、ここ2~3年有機石灰は使用していません。ボカシ肥料だけをすき込んでいます。
②タネまき
ホウレンソウ栽培で難しいのは発芽させること。タネがかたい殻で包まれているので、タネまき前日から一晩水に浸しておくと発芽がスムーズです。発芽しやすいようにコーティングしたタネを利用する場合は、水に浸す必要はありません。
タネは条間30cmで2条まきにします。トゲのある生種は水に浸したものを2~3mmの間隔でまきます。あとで間引けばいいので、厚めにまいておくと、安心です。発芽率のいいコーティング種子の場合は2cm間隔でスジまきするといいでしょう。
畝の表面を凸凹がないように平らにして、まき溝をつけます。支柱など棒を畝に押しつけて溝をつくってもいいですし、私の場合は三角ホーでスジをつけていきます。
溝の中にタネをまいたらもみ殻くん炭で覆い、周りの土を寄せて、手のひらでしっかり鎮圧します。
タネをまいたら水やりをします。私はマイエンザ1000倍希釈液を上からさっとまいています。土が乾かないように不織布をべた掛けしておきます。
ホウレンソウは直根を伸ばしてから芽が出るので発芽が遅いです。1週間くらいかかります。発芽がそろったら不織布は外します。
③メンテナンス
このあたりは冬でもあまり寒くないので、保温しませんが、寒い地方の方は不織布や穴あきビニールトンネルなどで保温して育てるといいでしょう。
本葉が出てきたら間引いて3~4cm間隔にします。隣同士の葉と葉が触れ合ってきたら、間引いて6~8cm間隔にします。最終的に10cm間隔になるまで、3回くらい間引きます。
間引きするついでに除草します。畝に生えている草を抜き、畝の表面に置いておきます。
追肥はしません。葉の色が周囲の草より少し濃いくらいが最良の状態です。葉色が濃い緑色になっている場合は、窒素分が多い肥料の与えすぎで、シュウ酸が増えて味にもえぐみが出ます。
④収穫
10月以降にタネまきすると、12月~3月頃まで収穫できます。この時期に育つと寒さに当たって甘く、おいしくなります。
引き抜いて収穫すれば、根元の赤くて甘い部分も食べられますが、一度きりです。株元を5cmくらい残して刈り取り収穫すれば、再生して葉が伸びてくるので、ひと冬に何度も収穫できて長い間楽しめます。